神隠しに遭ったヒト。



もしかしたら、帰れるかもしれないという小さな願いだけが、歩を突き動かす。



「その人の名前は?帰れたんですか!?」



緋葉はゆっくり、こう答えた。








「名は――真冬。帰れたかは知らないが、帰れたとしてもリスクは消えない。

神隠しに遭えば、元通りにはならない――決して」






わかっていたつもりだった。



それでも、聞いた今は聞かなければよかったと歩は思った。