無言で歩く真冬に、調子が狂うなと思いながらも声をかけるのは躊躇われた。――本人だけど、まるで違う人間に見える。

 隼政にこういう時の真冬が何を考えているか、さっぱりだった。



“時間がない”



 そうはっきり告げた真冬を見るのは、隼政にとって初めてだった。今まで自分の知る真冬は、これほどまでにはっきりと自分の主張をせず、常に水露の言う事を忠実にこなす犬のようだったと思う。――いや、この場合執事か?


 深々と意味もなく巡る思考回路。


 無理もない。


 街灯がほとんどない道を男二人で歩き、しかも目的地は神社。



 隼政の思考は突如そこで終わりを告げる。真冬が、急に振り返り声の限りに叫ぶ。