生まれてこの方家を出た事がない。家には立派な庭園があり、夕羅の好きな血のようなあかあかとした花がどの季節でも必ず庭に咲いていた。



夕羅はあかい花が満開になる度、唄を紡ぎながら花びらを散らす。



あかいあかい見事なまでの、美しい血のような薔薇が咲き乱れた時には、三日月のように唇をつり上げ薔薇の棘に傷つき血を流しながら唄をうたった。






ヒトの世は儚きヒトトキの夢幻



あかあかと滴り落ちる血はセカイを真紅に染め上げて



罪に染まりしヒトを壊しましょう



セカイにあかいあかい薔薇を咲かせて



ヒトの血で永遠の夢をセカイに刻みましょう



ヒトトキは永遠の夢のオリて



夕羅が自然と紡ぐ唄とあかい花を散らす異様な光景は、見る者に恐怖を与え思考回路をフリーズさせるには十分だった。