熊野明日香はのんきにいつ用意したのか、洒落たグラスにレモンを浮かべた水を飲んでいる。



隼政はよくこんな状況でと思いながら、思わず笑ってしまった。よくよく考えたら、今自分は最悪で最高の舞台にいるのかもしれない。こんな体験普通に生きてたら絶対経験できないし、むしろ自分は幸せなのかもしれなかった。



まるで、映画のワンシーンのようだ。



雪芭が包丁を持ったままゆっくり近づいてくる。



――ああ……こんな事なら、お金全部オカルトの本やグッズに使えばよかったな



一歩。



――もっと水露姉を大事にすればよかったか……?今思えば、もっと優しくするべきだったかも……



一歩。



――大学行きたかったなあ。オカルトについて、もっと研究したかった!



一歩。



――高校…………三人で、行きたかった……な……



一歩。



無言のまま包丁を振り下ろされ、周りにおびただしい血が飛び散った。



雪芭は終始無言のままだった。



熊野明日香が口を開く。






「殺しちゃったねぇ。ねぇ……今どんな気持ち?」