「君たちが神隠しの被害者?」



まさか人がいるとは思わず雪芭と隼政がぱっと上を見れば、真っ黒なフリルに首には赤い薔薇のついた黒いリボン。



こういうファッションが好きなのだろうか。似合わないわけじゃないが、何故かしっくりこない。



少女はもう一度問う。



「被害者?」

「……どうしてあんたが知る必要あるの」



警戒しつつ怒りを含んだ口調で雪芭が返す。しかし、少女は気にした風もなく再度また問う。



「神隠しの被害者だよね?」



これではいたちごっこである。このままでは終わらないと感じた隼政は、ため息をつき答えた。



「そうだよ。神隠しのせいで、全部無くしたんだ。それが、君にどう関係あるわけ?」

「やっぱりそうなんだぁ。私はねぇ、熊野明日香。一応、君たちと同じ立場だから仲間だよぉ」



雪芭と隼政は顔を見合わせる。うさんくさいと思うが、詳しく話を聞く必要があるかもしれない。



とりあえずここじゃ話もなんだから、と熊野明日香とカフェに行く事になった。



座り込んだままの歩に雪芭が手を差し出す。



「行こう。大丈夫、オレたちは君の事を知っているから」

「……はい」



悩んだ末に歩は雪芭の手を取った。記憶のない自分にできる事が何もなければ、これからどうすればいいのかもわからない今頼れるのは自分を知っている彼らだけだ。



歩はぎゅっと雪芭の手を握りしめた。



ただ思うのは、二度とこの手を離したくないという事だけだった。