嘘だと思いたかった。



今まで村は平和のはず、だった。天候の影響で作物の出来が悪かったり村へ来る旅人が少なかったりしたが、それでも村人はこんな時もあると笑った。



しかし、ここ最近行方不明の人が後を絶たず忽然と姿を消し失踪する理由もなく、平和な村で事件の可能性も低い事から、村人の間で“神隠し”だと密かに騒がれていたのを彼岸花は知っている。



祠の神様に村人が熱心に祈ってた事も。



彼岸花は初めて人間に対し恐怖と言うものを覚えた。



そんな彼岸花の心を表すように、さっきまでの雲ひとつない晴天が嘘のように空は薄暗くなり灰色の雲に覆われ、雨が降りだす。



緋葉と雨芭にはやく伝えたいのに、彼岸花の声や思いを二人に伝える術は存在しない。



空のように泣く事も叶わず彼岸花は、ただこのお社の近くでじっとしているだけ。



こんな雨の日に二人は来ないだろう。今二人の顔を見ても、悲しいだけなのに彼岸花は今顔がみたいと思った。



いつも笑っている元気な二人を見れば、少しでも気が晴れるんじゃないかって思ったのに、今日は来なかった。






『…………どうして?優しい村だったのに。神隠しのせいなの?』






彼岸花は沈黙する。






何もしてあげられない自分が悔しくて仕方がなかった。