出会った頃を思い出す。



水露は男みたいな性格で、異性として見られないとか一人でも大丈夫だろ、とか散々言われ男なんて腹が立つだけだと思っていた。



そんな時、弟の隼政は決まって近所でおいしいと有名のカツ丼を出前で頼む。これを食べて元気だせ、と言う事なのだろうが、水露は自分の弟ながら単純だなと思いながらも、結局それで立ち直れる自分はもっと単純だと思う。



そんなある日。



水露が買い物帰り重たい荷物を両手に持って歩いていたら、ひょいといきなり荷物を奪われドロボーと叫びそうになったが、優しそうな草食系の青年の方が先に言った。



「家まで僕が運びますよ」

「かなり怪しいんですけど?」



じとっとした目で青年を睨むが、青年がたじろぐ事はない。こんな男は初めてで、水露がどうしたものか戸惑っていると青年が笑った。



「べつに怪しい者じゃないですよ?ただ綺麗なお姉さんが重たそうな荷物を持っていたので、手伝おうと思っただけですから」

「はあ」

「僕の名前は真冬です、お姉さんは?」

「……水露」

「水露さんですか、いい名前ですね」






そんな月並みの言葉さえ嬉しくて、真冬との出会いは疑いと変な男ぐらいしかなかったが、いつの間にか真冬の存在は水露にとって必要不可欠になっていた。