ギュッ


「へ?」


思わず変な声が出てしまう。


だって.....


「先輩?」


「彩華がなかなか甘えて来ないから俺から甘えることにしたよ。」


先輩は私の手を取って大人な笑みを私に向けていた。


原田さんなら何も言わずに手を引くんだろうな。

それが当たり前のように、ごく自然に。


「先輩、視線が痛いです。」


「もー。雰囲気壊す発言しないでよぉ。」


だって本当のことなんだもん。


なんだか寒気を感じてキョロキョロする私にため息混じりに笑う田原先輩。


「あ....」


目に入るのは可愛い笑顔を浮かべる侑李くん。


侑李くんは私と目が合うと一瞬無表情になってそれからまた笑う。


目が笑っていない。

可愛らしいその笑顔は突き刺さるような冷たさがある。


なんで侑李くんはあんな顔をしているのだろう。