「どうにか間に合ったか・・・」


 運転手は、脇の下に拳銃を仕舞いながら車に戻って来ると、先程までと同様、じっと動かずにチャペルのほうを凝視し始めた。 

 俺は、動くに動けず二時間近くをこの草むらで過ごすと、オウム男はいつの間にか車の中に戻り、バカ面を向けて眠りこけていた。 
 俺は、頭の一つでも殴ろうかと思ったが、まあ、こいつにしては良くやったと思い直し、バカ面を起こさないように静かに車に乗り込んだ。

 さあ、後はどうなるか。上手く餌に食らい付いてくれれば良いのだが。

 とにかく、いくら何でも首相官邸を狙う事は有り得ないだろう。だとすると、移動中か、若しくはこのチャペルを襲撃。

「終わったの・・・・?」
 
 寝呆け眼の馬鹿が聞いてきた。 

「ああ、お前のお陰だな」

「そっか、良かった」 

 俺は思わず馬鹿の頭を撫でてやったが、なのにこいつは俺の手を払い除けやがった。 

 まっ、いいか。取り敢えず、今日はこれで帰って寝るか。