何とも間抜けな話だ。今度は向こうが勘違いしてやがる。 

「核兵器って何だよ。そんなもん開発なんかしてるハズ無いじゃないか。僕は顧客から依頼されたものを開発してるだけにすぎない。もしも、仮にそうだとしても、それがお前と何の関係があるんだ?」

「お前が作ってるものは、長距離核弾道ミサイルを上空で爆発させる為に人工衛星を操作する超高性能部品なんだよ。だから、お前が居ると私達が迷惑する。要は、お前が邪魔なんだよ」
 そう言いながら首を締め付けている手が本格的に僕を殺そうとしてきた。 

 僕は、これで終わるのか・・・・


 そう覚悟を決め始めた時、急に彼女の上体が鈍い音と共に僕の身体の上に崩れ落ちてきた。

 激しく咳き込む呼吸が苦しい。それでも力を振り絞り彼女の身体から抜け出すと、僕は自分の身体を転がして彼女から離れた。 


「危ないところだったな」
 
 そこには見栄えの悪い、まるで浮浪者のような老人が手に大きな石を持って立っていた。両肩は大きく上下に揺れ、荒い呼吸を繰り返しながら、手から石を足元に落とすと、ゆっくりと僕の傍らにしゃがみこんだ。