入院してた病院の看護師の細く綺麗な指。それにドキドキして目が離せなくなったこと。そして、今回、女性のほうから逢おうというこの展開。 

 これまで風俗の経験も無い童貞の僕は身体が火照り、耳が熱く燃え上がるようだった。

「そうだね。そのほうが早いかな。じゃあ、いつにする?出来るだけそっちの都合に合わせるよ」

「私はいつでも良いし、これからでも構わない」

 どうせ、用事なんか無いんだし、向こうの気が変わる前に決めてしまったほうが利口そうだ。 

「じゃあ、これからすぐという事で」

 場所と時間を決めると、僕は慌しく身支度を済ませると、電車に飛び乗った。
 それにしても、お互いの住まいがこんなに近かったなんて、偶然を越えてまさしく奇遇そのものだと思った。 

 駅にして三つ。時間にすると30分と掛からないが、駅から出た後の待ち合わせ場所が分かるかどうか。電話で説明された時には分かったつもりではあったが、今になって反芻してみると、どうも道順があやふやなのである。

 こんなことなら、待ち合わせ場所の名称を聞いておけば良かったと後悔しても、今更どうしようも無いことくらいは自分でも分かり切っている。 

 とにかく、覚えてる範囲で先に進むしか手立ては無さそうだ。 

 ただ、駅に着いてから掛けた電話が圏外で呼び出せない。ちょうど電波と電波の谷間にでも居るのだろうとは思うが、ここまで来て、まさかドタキャンも無いだろう。 

 そんな不安が打ち消されるかのように、歩き初めて20分後、前方にビルが見えてきた。

 多分、あれだろう。四階建てだと言ってたし、もう少し近くまで行けば、その全貌も明らかとなる。僕は、歩を早めた。