ーーーブー


鈍いサイレント音が城の中に響き渡る。


「ッ!」


ビックっと肩を震わせるセシル。
嫌な仕事の時間が来た。


「・・・仕事?」


「うん・・・」


「そっか」と顔をうつむかせて城を後にするフラン。
ここから二人はヒーロー役と悪役の立場に戻る。


帰れ、来るなっといつも言っているのにいざ居なくなると寂しい気持ちが溢れだすのは何でだろう?


セシルは思わず帰らないでっとフランの背中を止めたくなる左手を右手で掴んだ。


「は、早く・・・仕事するのだ。」


自分に言い聞かせるように呟く。
自分の役目を果たせない役は黒姫によって全身を真っ黒にされて灰になる。


黒姫からの仕事を受信する機械。
機械からはいつもくだらない内容が書かれている。ベイカリーのパンを盗むとか大豪邸の宝石を盗み出すとか。
そしていつも最後の一文は「ヒーロー役にやられる」


機械から一枚の紙が出る。
紙を抜き取る。


「午後1時にて
サーカス団のライオンを放っ
が、ヒーロー役によって止められる
ヒーロー役との決戦の末
ヒーロー役にやられる・・・」


こんなくだらないイダズラをどうして自分はやっているのだろう?