ガラガラ
ピシャンッ
保健室の扉を勢いよく開け、中を見る。
だが。
「っ…」
「柳田先生…?」
そこには誰もいなかった。
けど、開いていた窓。
窓から入り込む風がカーテンがゆらゆらと揺らしている。
「っなんで、いないんだよ…」
『嫌な匂いが少々』
「(なに!?)」
俺は悠太を見た。
「悠太、逃げた方が――」
「なんで?」
「え…」
悠太の目の色はあまりにも冷酷だった。
いや。
冷酷といっても悪気な感じではない。
ただ。
俺の言葉に腹が立ったらしい。
「だって……」
「俺が足手纏いだからか?」
「そんなんじゃ……」
『今更遅い』
ブレイクは言う。
『妖魔から何らかの傷、怪我、交流があれば、人は一生妖魔が見えない人生を歩めない。つまり、普通の人間は妖魔が見えないが、何らかの損傷を受ければ妖魔が見える、ということだ』
「(なら、悠太は…)」
『もう“普通”には戻れない人間だ』
そんなブレイクの言葉に俺は俯き、息を呑む。
「刹那」
悠太の凛々しいその声に、身を強張らせ顔を上げた。
そこには心配そうに眉を寄せ、俺を見つめる悠太。
静かな沈黙の間、時計の秒針の音が虚しく響いていた。
俺は歯を食い縛る。
「(悠太はもう、“普通”には戻れない…)」
少しそれに顔をしかめた。
だけどもう、戻れない、変えられないとわかった時、悠太を見つめ口を開いていた。

