苦しむことはあまりないが、悩むことは多い。
だけど。
悩みが消えたり、その記憶自体がなくなったわけではない。
つまり。
苦悩は減るが少し気持ちが軽くなるだけでそのもの自体は消えたりはしない。
結論的にそう考えられる。
『主よ、どうかしたのか?』
「いや、なんでも」
そうして俺は学ランを着てみんなより早い学校に向かって歩き出した。
学校に着いてもまだ校舎には誰も居なかった。
俺は1人寂しく下駄箱で上履きに履き替えて、教室に入る。
するとそこには既に、悠太がいた。
「…っ」
「よっ、はよ」
悠太は何事もなかったように笑顔で俺に挨拶をした。
俺は何も言い返せないまま黙り込む。
そんな俺を見て悠太は可笑しそうに笑い出す。
「んだよー、それ」
「え…ゆた…」
「あ?」
俺は震える指で自分の腕を指した。
「腕……」
「あぁ、大丈夫、この通りだ」
悠太は腕をぐるぐる回したりポンポン叩いたりして腕の完治を示す。
俺は堪えきれない嬉しさについ叫んでしまった。
「ゆーたぁー!!!」
「おわっ、うっせー!!!」
そして悠太にダイブをする。
「(悠太…)」
大丈夫、悠太は大丈夫って、思ってた。
だから正直、今だって当然だろって思うはず。
でも実際違う。
あの時、救急医が来るまで寝ていたから大丈夫かなーなんて思っていたけど、本当はすっごく心配だった。
だから何事もなかったように笑う悠太を目の前にしたら嬉しくて堪らなかったんだ。

