その時。
「………へぇ、何が…?」
その時ポツリと聞こえた声。
きっと父さんや母さんには聞こえていない。
かろうじて、俺だけ。
兄貴は目を細めて横目で俺を見据えた。
「(!)」
口許には怪しげな笑み。
どうして。
なんで。
その疑問だけが頭に募る。
俺はその場に居たくなくなって、リビングを出た。
その時晃汰はクスリと笑っていたのを、俺は知らない。
「(なんで…)」
俺は階段を登り、自分の部屋に直行した。
そしてゆっくりドアを閉めた。
「…ブレイク」
『奴が主の兄だったとは』
「……やっぱりアレって…」
アレとは邪悪な匂いのこと。
『その通り』
そう思いたくなかった。
だって。
だって。
俺は兄貴が大好きだから。
それに。
そもそも、どうして兄貴が邪悪なものにならなきゃいけないのだろうか。
「どうして兄貴が?」
『それは我も知りたいのだ』
「は?」
『主の兄は何者かと手を組んでいる可能性がある、それに相手は“悪”だ』
「何ぃぃ!?」
絶叫するしかなかった。
兄貴が“悪”と。
信じられない。
「てか、ブレイクは?」
『我も“悪”だ』
「はぁ?」
『でも“善”でもある。言ったであろう、主によってそれは変わるのだ』

