「楓ちゃん…」
「刹那、そろそろ行くぞ」
零の言葉に俺は頷きブレイクと時雨を連れて馬車に乗る。
「っ…」
そこには肩を震わせ俯く楓。
俺と零はただ黙り、座るだけしかできなかった。
一方時雨は楓の横に座り頭を撫でていた。
『では、出発だ』
ブレイクの言葉に馬車は動き出した。
コトコトと車輪が回るなか、松竹梅家の声が鮮明に響いた。
「楓ー!!時雨ー!!元気でねーー♪♪」
「寂しくなったらいつでも帰って来なさいねー!」
「「「楓さまーー!!!!」」」
「「「時雨さまーー!!!!」」」
みんなの声が聞こえ、楓は馬車の窓を開けた。
「みんな……」
楓の顔は涙で濡れていた。
「かえでぇぇ!!しぐれぇぇ!!」
その時聞こえた旦那様の声に、時雨も窓から顔を出した。
「頑張ってこいよぉ…!!!うわぁー」
旦那様の鳴き声が響き、次第に遠くなっていく。
それに比例して、楓は涙を増し、時雨は涙目になっていく。
二人はただただ泣いていた。
そんな二人を俺と零は申し訳なく見ることしかできなかった。

