「あそこにいる湖乃美様はお嬢様でしょ?楓ちゃんもお嬢様でしょ?お嬢様が2人いるの?」
「あたしもそう思うっ!!」
楓ちゃんはビックリしたように俺の方を見て、そう言った。
「え…?」
「気付いたら“お嬢様”って言われて、湖乃美姉様と同じ扱いをされてたの」
楓ちゃんは少し寂しげな目を伏せた。
俺は黙ってそれを聞いていた。
「でね、前に湖乃美姉様が誘拐されて……その場にいたあたしは姉様を助けられなくて……結局、時雨が助けてくれたんだ…!!」
「…」
「……あたしはその、自分の弱さを知って、情けないって思ったの。だから剣術を学び始めたんだよ♪」
そう言ってニッコリ笑った楓。
だけどドレスを握る手が震えていたことを俺は知ってる。
「…でも、あの時の無力さは、今でも忘れない……忘れられないんだよね…」
楓の揺らいだ瞳に、俺は吸い込まれるように、視野が狭くなり、楓しか見えなくなった。
「…あたしも、誰かを守れるような、勇気ある人になりたいの」
「っ…」
そう言って、楓は真っ直ぐな瞳で俺を見据えた。

