「はあ、疲れたねー」
「まだ一時間目じゃん」
「お腹好いたー」
「……」
周りの他愛ない会話が、酷く俺を不安にさせる。
あの女性。
俺と同じ窓際の人なら見えたと思う。
なのに。
どうしてそんなに平気でいられるのだろうか。
「な、なあ…」
俺は悠太の前に座る、ショートカットの女の子に声を掛けた。
「なにー?」
「あ、あのさ、さっきの時間でさ、空に……人かなんかが浮かんでいなかったか?」
ショートカットの女の子は俺と同じ授業放棄組だ。
俺と同じく、授業ほったらかしにして窓の外を見ていた。
だから。
コイツにも見えただろう。
……だけど。
「え?何もなかったよ、って、刹那頭がおかしくなった?」
そう言うと女の子はケラケラと笑った。
そんな女の子になぜだか腹が立ってしまった。
「おかしくなんか……なってねぇよ……!!」
俺はそれだけ言うと走ってその場から去った。
周りは俺の声に肩を上げる。
でも悠太だけは冷静に流し、俺の後を追ってきた。
ガチャリ
階段を駆け上がり、勢いよく開けた屋上の古びたドア。
風がブワッと吹き上がる。
「(ちくしょー……)」
俺は屋上にある小さなベンチに腰を下ろした。
ギイッとベンチが軋んだと同時に屋上の古びたドアが開かれた。
「……悠太…」
「よっ、授業サボろうぜ★」
その温かい優しさに少し心は和らいだ。
だが。
「……………あぁ…」
生まれた動揺は消えない。

