「ちょっ、時雨っ…」
女の子は時雨に言う。
「別に手を出した訳じゃないじゃない!」
「お黙りください、お嬢様」
「今は護衛なんていいから、時雨は舞踏会に…――」
「お嬢様はまた同じ過ちを犯すつもりですかっ!?」
「「(過ち…?)」」
「……」
女の子は黙り、唇を噛み締めた。
俺と零はただ時雨の口が再び開くことを待つ。
「……僕はただ、見たくないだけですよ、お嬢様」
そう言い、時雨は女の子を抱き締める。
「もう二度と…、あんな目にはさせません」
「しぐ――」
「僕はっ……――」
時雨は女の子を強く、強く抱き締めた。
まるでドラマのワンシーンのようにも見える。
だが。
「オレらの存在、忘れてね?」
俺の横で淡々と物申すバカが、2人を割り込んだ。

