俺たちの会話を見ていたのか、1人の女の子が微笑みながらこちらを見ていた。
その笑顔はまるで桜花のように儚げで。
俺と零はそれに気付き、女の子の方に視線を向けた。
「あ…」
俺は呟く。
なぜなら昨日の昼間に見た、剣を握っていた女の子だったから。
昨日とは裏腹に、華やかなショート丈のドレスを身に付けていた。
俺たちの視線に気付いた女の子はあたふたとしていた。
「(そうだ…)」
名前を聞こうと一歩前に出すが、それより先に動いたのは零だった。
「!!」
「…」
零は女の子の腕を無言で掴んでいた。
「なっ…」
俺はすかさず零の元に。
女の子は呆然としていて。
俺は零の行動に驚くことしかできなかった。
「放せって!」
俺は女の子の腕から零の手を放す。
女の子の白い腕がほんのり赤くなる。
「だっ、大丈夫?」
「あ……はい、大丈夫…」
続いて女の子の頬が月に照らされ赤くなっていくのがわかる。
俺は零に向き返り、睨んだ。
「……零、何やってんの?」
かなり、冷徹に言った。
だが。
「…わからない…」
ポカーンとした顔で言った零に俺は何も言えずに口をあんぐり開けた。
すると背後から聞こえた鋭い声。
「お嬢様っ…!!!」
「「「!!」」」
視界に入ったのは宙に浮き剣を抜いた1人の男。
「時雨っ!!!」
女の子の叫びも届かないまま、剣は俺に降りかかった。

