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「お嬢様?どうかされたんですか?」
「…………あっ、ううんっ!何も」
庭に出ていた女の子が顔の前で手をブンブン振った。
「ウソはつかないでください。わかるんですよ、全く………剣まで落として…」
「あっ、ホントだ、ごめんね……」
男はニッコリ笑って「慣れました」と言った。
女の子は男に向かって尋ねた。
「……ねぇ、時雨。今日来るお客様って……」
「はい?」
「あ、いや………何でもないの…」
女の子はそう言ってさっき見た窓をもう一度見た。
「(さっきの人、誰かな…?)」
女の子の少し熱を持った頬を冬を知らせる風が優しく撫でた。
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