あたしが前を歩き10分ほどしてあたしのマンションが見えてきた。
その10分はどちらも喋る事なく何となく気まずかったけど。
「ここよ」
「へぇ。いいとこ住んでるんじゃん」
皮肉ったような声があたしのなにかに染みわたる。
ナギ、の視線の先には有名な高層マンション。
ふぅ、と漏れたため息は空気に溶けてナギには届かなかっただろう。
「あしたの朝、迎えに来るから勝手に行くなよ」
黙ってエントランスに向かったあたしを肯定した、と思ったのか
「じゃーな、副会長」
とだけ言ったのを最後にエントランスの自動ドアが閉まった。