ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―


 独りごとのあと、不意に過去の『失敗』を思い出す。
 忘れようとして、ビールをぐいぐい飲む。
 缶ビールはすぐに空になった。
 ぐしゃり、と握り潰してテーブルへ放る。
 ひしゃげた缶はいびつに一回転して、タマがきれいに並べた空き缶の壁の手前で止まった。
 ポチはほっとした。
 それから、頭を数回振って、思考をタマから引きはがす。

「……明日、あのマンションへ行ってみるか」
 思考は自然と仕事のこと――自殺のあったマンションのことになった。
 そのままソファーに横たわり、天井をにらむ。
「防犯カメラの死角を実際に確認して、例の9部屋の居住者のことも調べみよう。……これはただの自殺では――」
 自殺ではないかも知れない……。
 もしそうだったら、課長からまた怒鳴りつけられるだろう。
 仕方ない。
 それに業務外のことだから、休日出勤にもしてくれないだろう。
 仕方ない。
 タマは来るなと言ってもついて来そうだな。
 仕方ない……。
 ――ポチは眠りについた。





(第二章へ続く // 近日公開予定。乞うご期待・拝)

追記:ポチのスピンオフ作品を公開しました。
   TOP検索窓より「痛い恋」でヒットします。
   タイトル「痛い恋かな?」です。
   ぜひお読みください。