「ン? ……そっか、建築基準法――斜線規制だっけ? マンションの上の方が斜め切ってあったり、段々畑みたいになってるの」
「段々畑って……。まあ、それだよ。そのせいで部屋がないから、防犯カメラは本来あるべき位置、エレベーターの全体が映る位置に設置されたんだろうな」
「ン~、代わりに屋上階段の入口に死角ができちゃったけどね」
タマはそう言って、缶ビールを飲み干した。
視線が未開封の缶へ転じる。
もう一本開けようかな――というところだろう。
手をそろりと伸ばしかける。
「……それ、何本目?」
ポチが半ば呆れながら訊いた。
「ン~、忘れちゃった。あはははは……」
タマは手をひっこめた。
指をくわえるタマを横目に、ポチはガシガシと頭をかきながら、考えをまとめようとする。
「――鈴木氏は、エントランスでカメラに映ることでマンションに来たことを明確にしたかった。しかし、訪問先は秘密にしたかった」
「うん、そうね」
タマはそう答えながら、名残惜しそうに缶ビールを見つめていた。



