「うん、虫ならこんな風に映らないもん。近すぎればぼやけるし、遠すぎれば映らないし。それに、ブンブン飛び回って何回も映るんじゃないかしら」
「そうだな。この映り方だと、たしかに人間――そう、屈んで通った人の頭のようにも見える」
「でしょ? だから正解は『鈴木さん』デシター。ジャジャ~ン!」
「イラっとするなぁ、その効果音! ――でも」
ポチは苦笑いをした。
「でも、その可能性は十分アリか」
ポチは『人影のようなもの』の映っていた時刻をメモした。
それは午後九時――鈴木がエントランスに現れた時刻から約三時間後だった。
タマが横から覗き込む。
「ン~、この人、三時間も何してたんだろ?」
「さあな。……迷ってたんじゃないか?」
「道に?」
「人生に」
「ポチ、『うまいこと言った』って自画自賛してない?」
「んなことねーよ!」
「ホントにぃ?」
「ホ、ホントだよ!」
「じゃ、そうしといてあげよう。特別だよ?」
「そりゃ、どーも。……自殺の名所なんかさ――」
「え?」



