「もしかして、エレベーターの向かい側にある部屋?」
「そうだよ。……映ってないのによくわかったな」
ポチは少し驚いたようだった。
「ン、映像見てたら、エレベーターの向かい側の壁に、玄関のドアの端っこみたいなのが映ってたから……」
タマがその映像をテレビに映しだした。
エレベーターの対面の壁に、カメラアングルの端をかすめるように黒っぽい角――玄関扉の枠のような物――が映っている。
「……本当だ。気付かなかったなぁ」
ポチが頭をかいた。
タマは首をかしげる。
「でもさ、そんなのアリなの? 自分ちの玄関を映すな、なんてさ。ただの理事長夫人のわがままじゃない」
「……仕方ないさ。こんなのは理事長の公私混同だけど、俺たち管理会社としては契約解除をちらつかせられれば……まあ、仕方ない」
「ン~、『仕方ない』が多いよ? ――ポチ、ヤなオトナになっちゃったね」
「……仕事柄、それも『仕方ない』――さ」
ポチは、タマから目を反らせた。
無意味にテレビを見つめる。
タマは、何も言わずにポチの頭をそっと撫でた。
ポチはじっとしている。



