ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―


「……俺が前任者から引き継いだ話なんだけど、さ――」
 ポチは深くため息をつく。
「……カメラを設置した当時の管理組合理事長――正確にはその奥さんが、玄関先を防犯カメラに撮られたくないって言い出したんだ。生活を監視されているようで不快だとか。でも、実際には、玄関の出入りを撮られたくなかったらしい」
「ン~、気持ち、分からなくはないけど。でも、そんな嫌がるほどでもない気も――」
「……撮られたくないっていうのは、奥さんの浮気相手の出入りだったんだよ。平日の昼間、よくオトコを引っ張り込んでたらしい」
「あ~~~~、そっか……。それは映っちゃうとまずいよね。あはは……」
 タマは気恥ずかしくなり、顔が火照るのが分かった。
 すでにビールで顔が赤かったので、ポチには気づかれなかったが。
「ン~、でもさ、他の居住者から何か言われるでしょ?」
「浮気のこと?」
「あ、ううん、カメラだよ? 防犯カメラの位置のこと!」
「あ、ああ、そっちのことね。――予算や技術上の問題とか言ってごまかしたそうだよ。それに、理事長の部屋だけじゃバレるから、他の階も、同じ位置の部屋は死角になってる」