ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―


「そう。節電のため、使用頻度の低いこの階段は消しているんだ」
「ここも死角よね。第二の『死角』」
 タマの指摘は暗闇だからではない。
屋上階段の入口もカメラアングルから見切れていたのである。
それは大人の肩の高さくらいだろうか。
10階のエレベーターよりも死角の割合が多いようだ。
「ここでも鈴木さんは身を屈めて――っていうよりも、ちょっと頭を下げれば大丈夫そうね? ――で、屋上階段を上がっていった」
「……確かに、そうやれば映らずに屋上へ行けそうだな」
「でしょ? でもさ――」
「うん?」
「ン~、このマンションってさ、死角が多くない? 直さないの?」
タマは何気ないように言った。
しかし、ポチの表情は硬くなる。
「……まあ、予算の関係もあるしな」
「でも、防犯カメラに死角って、やっぱりおかしいよ」
「このマンションは……仕方ないんだよ」
「え?」
「……わざと死角を作ってあるんだ、ここ」
「は? ――えと、それはどういう……?」