防犯カメラの設置位置がエレベーターに近すぎるからだ。
側面からなので扉の開閉は見えないが、人の乗り降りが映らないというわけでもない。
見切れている部分が、いわゆる『死角』というものである。
タマは説明を続ける。
「死角を利用するために身を屈めて(かがめて)エレベーターを降りる。そして、そのままカメラアングルの外を通って、階段で11階へ上がる。――偶数階の階段には防犯カメラがないみたいだし?」
「うん、奇数階だけに設置されている。設置当時の経費削減策らしい」
「11階は奇数だけど、階段にカメラはないのね?」
「そこは屋上階段――防犯目的としてはカメラの設置の必要性が低いから」
「そっか。屋上階段って――」
タマはリモコンを操作して、最上階のエレベーター前の映像を映し出す。
10階に比べてカメラの設置位置が手前にあるため、エレベーターは、同じく側面からのアングルだが全体が映っている。
このエレベーターには『死角』がない。
――しかし。
「この手前側の真っ暗のところが、屋上階段でしょ?」
映像の手前の隅には、明かりが灯っていない開口部が四角く口を開けていた。



