「っ何笑ってんだよ」
そっぽを向く彼は存分子供に見えてしまう。それがまた可笑しくて、不躾にも笑みが漏れる。
きっとアルトは、私に気を使ってくれているのだと分かってしまったから。
「ははっ…、ねえ。アルト、ごめん」
「……?」
「もう勝手に判断して動かないようにする、迷惑は…まあ、かけちゃうけど」
単に情けないのだ、私は。
自分がどれほど危険な場所にいるのか分かっていなかった。
危険、という言葉だけを丸呑みにして物事の本質を見極められていなかった。
「……利害が一致した理由はあんまり、わかんないけど。」
「…だからそれは、」
「分かってる。そういう性分でしょ?」
そこに別の理由があることは、なんとなく薄っぺらに分かっていたが。
今はまだ知るべき時ではないような気がするのだ。
「それでいいよ、私は私の命が安全であるためにアルトといるようなものだし」
「……」
ほら、これが貴方の言う利害の一致でしょう。
そう向けられた彼女の言葉に、アルトは軽い眩暈がした気がした。
無意識に息を飲み込むと、月は希望を見たような瞳を三日月状に歪ませた。
「ねえ。だから、守って」
「…アンタを?」
「うん。図々しいけど、お願い。
……この利害が壊れる時まで、安楽街に着くまで」
「……」
最初からそのつもりだ、とどこぞのヒーローのように言えていたらきっと楽だった。
でも不器用な性格、そんなことは言えない。
元からそのつもりで拾った、安楽街を"見つける"まで。
(自分が守ると、確かに誓っているのだから)
ただ言葉を繋ぐ為に口を開いたその時、タイミングも悪く寝室の扉が空いた。
二人はそれぞれの思いを抱えたまま振り返り、和やかな笑みを浮かべた理貴を見て安堵した。

