「そしたら、さっき見たのと同じようなケーキだったんだよ。
名前聞いたら、ザッハトルテっつーんだと。やたら偉そうな名前じゃねぇ?」
ザッハトルテは、チョコレートケーキの王様って言われてるくらいだからね。
えらいんだよ、きっと。
「で、そのふたつのザッハトルテが似すぎてたから、麻美に聞いた。これどうやって作ったんだって。
そしたら本見て作ったっつーんだよ」
「え……」
まさか。
息を飲んで、固まった。
そんな、まさかだよね。
そんな偶然あるわけが……。
「あいつその本持ってきてて、なぜか得意げに見せてきた。こっちのケーキが可愛いだの、この手書き文字も可愛いだの。
でも俺はそれどころじゃなかった」
だって載っているどれもが、食べたことのあった物だから。


