「家にいるよ……」
『外出てこられるか。さみーから、なんか着て』
「……いま行く」
だめだ。
もう何も考えられない。
頭は霞みがかったみたいにぼんやりしてるのに、視界だけはやけにクリアで。
わたしがコートを羽織って外に出ると、
ヤンキー先輩は制服姿のまま、家の門の前に立っていた。
わたしを見て、ふっと笑う。
その優しい笑顔を見ただけで、止まっていた涙がまた溢れそうになった。
じっと、ヤンキー先輩を見つめる。
そういえば、いつからだったんだろう。
彼の鞄から、あのとんでもなく似合わないスイーツデコのキーホルダーがなくなったのは。
「ごめんね、ヤンキー先輩……」
「は? なんでお前が謝るんだよ」
目の前に立った先輩が、わたしの髪をくしゃりと撫でる。
なんだか懐かしさすら感じる仕草だった。
こうやって撫でられるのが、わたしは大好きだったのに。


