おやすみ、先輩。また明日


あきれているような、それでいて愛しむような、そんな宇佐美先輩の声のあと。

ププッと短い電子音が断続的に鳴り始めた。



「ごめん、宇佐美先輩。キャッチ入っちゃった」


『ああ、じゃあ切るよ。……ハッピーバレンタイン、杏ちゃん』


「え?」



妙に発音よく言って、宇佐美先輩が通話を切った。


それでようやくケータイ画面を確認すると、いま話題になっていた人の名前が。



どうしてこのタイミングで……。


まだ何も心の準備ができてない。

終わったはずの恋心とか、勝手にあきらめてしまった罪悪感とか、どうしようもないいとおしさとか。


それでも指は画面の通話ボタンに触れていた。



「……ヤンキー先輩?」


『よう。……いま家か?』



風の音がかすかに聞こえる。

外にいるのかな。


ヤンキー先輩はいまどこにいるの?

麻美さんは?