静かな調理室の大きな冷蔵庫。
そこからそっと紙袋を出す。
慎重に生徒玄関まで運んで、ヤンキー先輩の靴箱の前に立った。
直接渡さずに、ここに残していく。
手紙は添えてない。
だからわたしからのものだって、彼にはわからない。
それでよかった。
最後まで、わたしは“好き”と言葉にせずにこの恋を終わらせるんだ。
わたしの“好き”はいつだって、わたしの作るお菓子の中にあった。
最後まで、それでいい。
どうかこのチョコレートが、ヤンキー先輩に食べてもらえますように。
さあ帰ろう。
「もう帰っちゃうの?」
突然かけられた声に肩が跳ねた。
いつからいたのか、宇佐美先輩が後ろの靴箱に寄りかかってこっちを見ている。


