「こら1年! 調理中にケンカしなーい!」



離れた調理台でパイ生地を伸ばしていた部長から、いつものお叱りが飛んでくる。

その手元には真っ赤なリンゴ。


リンゴパイだ、きっと。

わたしが先週リクエストしたの、覚えていてくれたんだ。


思わず頬が緩んだわたしと違い、須賀ちゃんと山中さんは不満げな顔を見合わせて、渋々謝って調理を再開する。

これもいつものことだ。



「須賀さん。泡立ちは悪いけど、ちゃんと出来るから大丈夫だよ。そうだなあ。あと2分くらい混ぜてみて?」



暗くなった雰囲気を変えたくて、精一杯明るく言ってみる。

山中さんは真剣な顔でうなずいた。


もうちょっと肩の力を抜いてくれると助かるんだけどなあ。