おやすみ、先輩。また明日



「須賀さんのもうちょっとと私のもうちょっとは違うと思うんだけど」


「だーかーらー! そんなのフィーリングだって!」


「私はフィーリングじゃなくて、ちゃんとした数字が知りたいの」


「お菓子作りは数学とは違うじゃん! 愛があればいいの、愛が!」



須賀ちゃんは山中さんとは反対に、とっても大雑把。

だからお菓子作りで失敗したり、残念な仕上がりになることも多い。


そしてよく、山中さんと言い合いになるのでちょっと困る。

何が困るって、2人して手が止まるのもあるけど、他の先輩方の迷惑になるのだ。


そして部長に怒られるのがいつもの流れ。



「まあまあ、2人ともケンカしないで。
それにしても、ちょっと泡立ちが悪い気がするねぇ。ええと、山中さん砂糖は何回かに分けて入れた?」


「入れたし。言われた通りに私はやってる」


「そっか~。じゃあなんでだろうね。卵白入れる前に、ボウルは洗ってよく拭いた?」


「あ、ごめーん桜沢! あたしテキトーに拭いちゃったわ!」



悪びれなく笑って挙手する須賀ちゃんに、わたしはまたかと苦笑い。

なんとなく予想はしてた。

須賀ちゃんは細かいことは気にしない性格だから、こんなことはしょっちゅうだ。