「やあ、おふたりさん。そっちもデート中だったんだ」
「そっちもって、やっぱり宇佐美くん、彼女なの? わあ、紹介して!」
「ムリ。この子人見知りだし」
宇佐美先輩の柑橘系の香りに包まれて、わたしは混乱していた。
宇佐美先輩が喋るたび、呼吸するたび、微かな体の動きにどきどきする。
なんで? どうして?
宇佐美先輩、今日に限ってこんなに優しいなんて、やめてよ。
「……ふたりで来たのか」
感情の読めないヤンキー先輩の声に、ぎくりとした。
どうしよう、誤解されてる。
でもわたしはこの守ってくれる腕の中から抜け出して、仲の良い恋人たちの前に面と向かって立つ勇気はない。
今日はムリ。
逃げたい。


