うそ。
低くて少しハスキーなこの声は。
目の前の宇佐美先輩の整った顔から、表情がすっと消えた。
「……藤」
やっぱり、ヤンキー先輩だ。
ヤンキー先輩がいまわたしの後ろにいる。
そして、
「宇佐美くん! こんばんは」
明るく軽やかな、可愛らしい女の人の声。
そうだよね。
夏祭りだもん。彼女と来るに決まってる。
「お前も来てたのか。誰と……」
「宇佐美くん。もしかして一緒にいるの、彼女?」
何も知らない明るい無邪気な声が、不快感と一緒に耳の中に残る。
実はちょっと、見てみたいと思ってたんだ。
近くから、ヤンキー先輩の彼女を。
でもいざこうしてみると、怖くてとてもじゃないけど振り向けない。
それなのに。


