「あ…は…い」
落ち着け、副社長だよ。
「鞍橋君?」
「…すいません。この面々に緊張してしまって。しかも社長も…申し訳ありません」
「…」
「はっはっはっ!佐原とは全然違って初々しくて結構結構」
なんとか切り抜けた。
それから、数時間副社長の斜め後ろで立ってるだけでかなり疲れた。
「お疲れ様、立ちっぱなしで申し訳ありません」
「フフっ…」
つい、笑ってしまった。
「何かおかしいですか?」
「あ…いえっ。良く謝る方だと……あっ…すいません、口がすぎました」
ヤバッ!いつも一言多いって七子に言われてるんだった。
「ありがとう」
声がアイツに似ててもしゃべり方一つでこうも違う風になるのか…いやっ、顔を見て話してるせいか。
副社長の声は私を過去に引き吊り戻す天才だ。
私には、将来を約束をした相手が居た。
それは暑い夏の朝方だった。
「元気な女の子ですね~」
私はこの世に生を受けた。
両親は手放しで喜んだ。
その半日前にアイツは産まれた。
誕生日は1日違いのお向かいさん。
必然的に仲良くなり幼なじみになり成長していく。
私がこの顔で悩んでるのも知ってる。
“気にすんな”
なんの解決策もだしはしなかったけど、その言葉は何よりの励みだった。
ある日の昼下がり。
私達は思春期の真っ最中の中学2年になってた。
「み~ちゃん!槙が又、喧嘩して生活指導室連れてかれたらしいよ?」
昔からやんちゃ坊主だったけど、意味も無しに人を傷付ける奴じゃないって知ってた私。
「今度は何?」
「……」
「あらチャン…」
「……」
「…あらチャンは意味も無しに喧嘩する人じゃないよ」
「…俺は聖人君子か?」
「あぁ、そうかも!頭良いし」
「お前ほどじゃねぇ」
「そう言う頭が良いじゃないよ…」
「…お前の事言われて頭きた」
「私?」
昔から良い噂なんか流れない。

