高原ベンチャーに先ずは気に入ってもらわなきゃ。
「佐原君は秘書の経験は?」
社長に尋ねられた。
「無いです」
「お父様から聞いているとは思うが、君には一寿の右腕的な役割をして貰いたい。1年…君には秘書の仕事をこなして貰いたい。そしてNYに行って貰う。いいかな?無理なら無理と「やります。やらせてください」
「ありがとう」
頭を下げられた。
聞いていた噂の高原ベンチャーの社長とは思えない。
気に入られてるのか?
「先ず、僕は何をすれば…」
そしたら社長は内線で
「高原君を頼む」
???
すると、
「失礼します」
すっげえ美人が入ってきた。
「そら、佐原太一君だ。明日から一から秘書の仕事教えてくれ」
「畏まりました。初めまして、秘書見習いの高原そらです。私も見習い中の身なので一緒に頑張っていきましょう!」
気さくな人だったのが第一印象だった。
女は怖い。化けやがった!
次の日から秘書の仕事をするのにスーツで出社したら
「コレに着替えて下さい」
ジャージが支給された。
「毎朝、自宅から乗り物を使わず出社してきて下さい。使うとしたら自転車のみでお願いします」
はっ!?
「特に佐原君はお坊っちゃん育ちと聞いたのでウォーキングが好ましいかと、あっそれと、1ヵ月後に秘書検2級は受かるように指導して行きますので泣き言は一切うけ付けません」
滅茶苦茶厳しかった。
「貴方は覚えが早いですね…」
羨ましいと去り際に言われた。
「私の弟も頭が良くて器用に世を渡っていく人間なんです」
初めてプライベートの話をそらさんは話してくれた。
「一度挫折を味わって横道に逸れたけど、今は独りで渡米して会社の再建に励んでるの」
「優秀なんですね弟さんも」
「弟は優秀よ…私なんかが姉で可哀想だわ」
「美人な姉って自慢ですけど?俺、一人っ子だし」
「お世辞ありがとう」
お世辞で言ったつもりはないけどな。
「顔に似合わず消極的な高原さん以外です」
「よく言われたわ…」
誰に?
「さっ仕事しましょ!腹筋50回からね」
半端ねぇ。
ある日、高原さんが病欠って言われ違う人が教えてくれた。
「佐原君って彼女いないの?」
「どこ住んでるの?」
「今度遊んで~」
いつもと違う秘書課がそこにあった。
「今日は皆さんのびのびと仕事されるんですね?」
そしたら
「当たり前よ~、高原親子が居ないし、お局堀町も居ないとあっちゃ天国よ」
高原親子?
「えっ?まさか気づいてなかったの?社長の娘よ高原そらは」
全くわからなかった。

