その夜


ムシャクシャした気持ちを飲み屋で知り合った見ず知らずの女にブツケていた。


「このご時世がなんだ、低コストって…職人をバカにしてんのか?」


「……」


「コレまで培ってきた信頼も商品もそれを作ってきた人も全部無くなって「佐原太一」


急に名前を呼ばれた。


「んだよ!」



「あんた、優しいね」



「……」


冷めた。


ベッドの端に座ったら女も横に座った。


「今時、下の人間の事を人間と思わない会社は沢山有るって言うのにアンタんとこの会社って人情溢れてんだね!そんな会社に就職したいな~」


そういえば、こいつの名前や年齢知らねー


「あんた名前は?」


タバコに火をつけた



「七子!中3」


はっ?中3!?


「老け顔ってよく言われる」


いやいや、そんなのはどうでもいい…俺、犯罪だろ?


「なんかもう、どうでもいいかなって……リップスってお店で今、No.2やってるの。今度暇だったら来てね!」


名刺を渡された……浮気か?



「その人さ、勝手に進路決めちゃってね…告白もしてないし、幼なじみって肩書きだけどずっと近くで一緒に歩いてきたつもりだったのに」



「まさか…ロストバージン?」



苦笑いになる七子



「キャバ嬢が処女って笑えるよね」



マズイ、どうでもいい抱き方した。



「ごめん」



「何で謝るの!?」


「ぃゃっ…だって、ロストバージンは一番好きな奴と……とか、夢持つだろ?」



「夢……そこまでなかったのかも。自分で決めた事だし、佐原さんイケメンだし?得した気分。ありがとう!」


こんな子も居るのかこんな世の中……違うな、俺が汚れてんのか。


「続きするか?中途半端な処女も嫌だろ?」


「う~ん……辞めとく。なんか今からって恥ずかしいな…」


「可愛いな七子って」


「そう?ありがとう。嬉しい」


中3の子にヤバイ…。


「恥ずかしいってだけだろ?俺に抱かれたくないって訳じゃないでしょ?」


恋に落ちるのは簡単だった。