『あの、早く行きましょう!』 人ごみの中、その透き通った声が俺の耳まで鮮明に届いた。 歌声でなくとも、綺麗な声。 「ねえ、今の声」 「ああ…」 すぐ近くに立っていた望もその声に気付いたようだ。 そう、あの声は… 俺が聞き間違えるはずがない。 あの時、屋上に居た子の声だ。