微かに聞こえてくる声はこの寒さの中、なぜか開け放たれている窓の方から届く。
という事は。
「屋上からか?」
「そうみたいだね」
「…これは、行ってみるしかなくね?」
拓弥はそう言うと、直ぐに教室を飛び出して行った。
「あ!待ちなさいよ!」
そして、望までもが拓弥の後を追い、教室を出て行ってしまった。
思い立ったら即行動の二人は何をしでかすか分からない。
そして、バンドの存続の危機でもある今、この一筋の光を手に入れない訳にはいかない。
そんな二人を放っておく訳にもいかず。
その歌声の人物が一体誰なのか気にならない訳がなく。
俺もその後を追った。