「でも、一歩前進したよね」
「ああ」
そうだ。
少しの距離だが、確実に前進した。
これで、バンドが解散するという危機からは逃れられたのだから。
ボーカル候補の彼女が手に入った、この成果は大きい。
「じゃあ、次の目標はおかもっちゃんのやる気を出しつつ、文化祭で思う存分暴れる!って事だよな!」
「暴れるんじゃなくて、バンドの凄さを知らしめる。だからね」
「似たような事だろーよ」
…全然、違う。
暴れて、怒られて失望されたらどうするんだ。
まあ、そんな事は言わないが。
拓弥に事情を事細かに話しても無駄な事は分かっている。
さて、本気を出していきますか。
バンド活動をな。


