kiss-choco

「……じゃ、じゃあ帰ろ、っか?」


あたしは、ちらちらと相沢くんの様子を窺いながら言った。

相沢くんは姿の消えた駐車場から視線をはずさなまま、


「ああ」


と小さく答えて。


あたし、こういう匂いに気付くの早いんだよね。

誰が誰を好き、とか。
誰と誰が付き合いだした、とか。

もちろん、こいつあたしに気があるな、とか。

(今までの相沢くん敗戦歴に関しては置いておいて)


そのあたし、気付きたくないけど、気付いてしまった、気がする。



『相沢くん、椿ちゃんの事好き』?



「帰るぞ」


相沢くんはあたしのチラ見には気付いてないのか、くるりと向きを変えて、すたすたと歩き出した。

ぱたぱたとついて行くあたし。

相沢くんの大きな背中、それに寂しさを感じてしまうのは、
あたしの気のせい?


「あ、あの。相沢くんさー」


「何?」


「怪我、大丈夫なの?」


「ああ」


ほらね?
椿ちゃんへの態度と、微妙に違う。