kiss-choco

ふへ? と振り向くと、そこには保健医の椿(つばき)ちゃんが立っていた。

帰るところなのか、いつもの白衣を脱いでいて、肩にはバッグをかけている。


「あ、椿ちゃんも帰りなんだあ」


「うん、そうなのー」


椿ちゃんは、おっとりと笑った。

その笑顔は25歳とは思えないくらい幼い。
化粧っ気がないせいか、お肌はつるつるで。

お姉ちゃんのお陰でメイク大好きなあたしとしては、
一度は椿ちゃんをいじってみたいと常々思っているところ。


「そうだ。相沢くん、足は大丈夫? まだ無理しちゃダメよ」


椿ちゃんはあたしから相沢くんへ視線を移し、心配そうに言った。


「あ、ああ。わかってる」


相沢くんはぶっきらぼうに答えた。


「え! 相沢くん、怪我してるの?」


「捻挫よ。練習中にひねっちゃったのよね?」


椿ちゃんが同意を求めるように言うと、相沢くんは小さく頷いた。


ふうん、練習とは言え、剣道なんてものは大変なんだ。
怪我と隣り合わせなんだなあ、そう思いながら横の相沢くんを見上げた。