肌寒さと、首の疲れを感じて目を開けると、
外はすっかり日が落ちていて、
教室には誰もいなくなっていた。


「わっ。あたしすっかり寝てた!」


うう、こんな調子じゃ本当に片桐くんたちに売られちゃうよ。



「あーあ。とにかく、帰ろ」


あたしは身支度を整えて、机の脇にかけていたバッグを握って教室を出た。


とぼとぼと歩いてげた箱まで着くと、


「ん、広瀬? 帰ってなかったのか?」





相沢くんが、いた。



「ひゃ、あ、の、これは! 相沢く、えと、はひ!」


あーーー! あたしのバカ!!

何動揺してんの!

相沢くんの顔見ただけなのに!!


「ずいぶん遅くまで残ってんな」


相沢くんはあたしの様子なんてお構いなしに、
座ってスニーカーのひもを結んでいた。


部活の後らしく、首からタオルを下げたまんまの相沢くんの横顔が見えて、
あたしはその横顔の唇にばかり目がいってしまう。



ひゃー、無理無理!


あそこにあたしの唇を!?


難しいどころじゃない、無理!