「あんた、今週中に相沢とキスしなさい」


紗希はあたしを指差して、高らかに言い放った。


「はあ!?」


「あんた相沢にどれくらいの時間かけてるか分かってる? もう一年も経とうかっていうのに、まだ落とせてないんだよ。
このままダラダラやってたって無理。
キスでもきっかけになるかもしれないから、やってこい」


「やってこいって、そんなあ……」


あたしは紗希の指先を見ながら、泣きそうな声で言った。



でも、こんな状態の紗希には、あたしは勝てない。

目がね、ぶっ飛んでる。


「そんなあ……、じゃないっ。いい? 鈴奈が相沢にキスできないまま終わったら」


「お、終わった、ら?」


「片桐か木村に売りつける」


「はあ!?」


あご、がくんってなったんですけど!


「二人ともさ、あたしに鈴奈との事頼んでくるのよ。ヨリ戻したいって。
だから、どちらかと付き合いな。あたしにも多少のメリットがあるし?」


にひひ、と紗希は悪どい笑いを見せて。


「いい? 頑張ってキスやらかしてくるのよ! 今週が鈴奈の運命を決めるのだ」


なんて演技がかったように言った。


ええええっ!!??

あたしはぱくぱくと口を動かしながら、反論の言葉を考えて、

出なかった。