相沢の顔が、ぴくりと動いた。


「普通さー、あの場面ならお姫さま抱っこでしょ。それをあんな担ぎ方するっておかしいなーって思っててさ」


相沢は何も答えない。


「もしかしたらさー、お姫さま抱っこなんてしたら、理性がきかない……」


「黙れ」


ぴしりと鋭い一言。


ウヒ? これ、ビンゴ?


「いやー、気持ち分かるよ? あんな状況だったしさあ、無事だと分かったらそりゃ抱きしめたくもなるし、泣き顔みたらなおさら……」


「いいから、黙れ」


ビンゴ!

相沢の片眉がピクピクと動いた。


「鈴奈がさあー。こないだ言ってたんだよねぇ。何であんな荷物みたいに担がれたんだろーって」


「…………」


「友だちとしては、思いつく理由を教えてあげたいよねえ」


「……何が言いたい」


「えー? ジュリアのゆるふわプリンでも口にしないと、ぽろりと言いそうだわあーって」


「鈴奈にも、買わせてただろ」


「あれはキャラメルタルト」


「…………」


「ああー、プリン食べないと口が軽くて困るー」


相沢が、小さく舌打ちした。
その音に、あたしのお腹の中にいる悪戯なあたしがウヒヒと笑った。