黒い革張りの二人掛けソファーにちょこんと座ったあたしは、でっかい溜め息をついた。


ああ、なんかどきどきが収まらない。
あたし、今相沢くんの部屋にいるんだあ。

つい、視線が動く。

隅に置かれた雑誌とか。
本棚に並べられた本とか。
あ、あれは盾に見えるけど、剣道の大会のやつ？


って、あんまりきょろきょろしちゃよくないよね。
慌てて視線を自分の膝に落とす。

うう、落ち着かない。



はふ、と溜め息をもう一度つく。




昨日から、全てが目まぐるしく変わってしまって、ついていけてない。

色んなことがぶわあっとやって来て、一晩寝た今でも、頭は混乱している。


何だか信じられなくて、もしかして夢見てるんじゃないかと思ったりもするけど、
手首や足首はやっぱり痛いし、その痛みは現実なんだって教えてくれる。


「夢じゃ、困るけど、さ」


ぽつりと呟く。

相沢くんとのことは、夢で終わるのは嫌だ。